ヴァイオリン(violin)は、弦楽器の一種。弦を弓などで振動させることによって音を出す。ピアノと並ぶ非常にポピュラーな楽器である。しばしば「Vn」「Vln」と略される。
全長は約60cm。一般にボディ長で楽器の大小を見る。現代では355mmが平均。オールドは352mm前後が多い。重量は楽器にもよるが、300-600g前後である。
材料
一部の電気ヴァイオリン(ヤマハのサイレントヴァイオリンなど)にはプラスチックも用いられているが、本節では伝統的なヴァイオリンの材料について述べる。
ヴァイオリンに使用される木材は、部位によって異なった樹種が用いられている。表板はスプルース(ドイツトウヒ)、裏と側板・ヘッドなどにはメイプル(イタヤカエデ)が一般に用いられる。指板は通常黒檀が使われる。
これらの材は湿気による反りなどの不正な歪みを防ぐため、通常15年以上自然乾燥された木材が適当とされている[要出典]。現在では乾燥釜をつかった強制乾燥による5年から8年もののKD材を使用する場合も多い。
側板・裏板のカエデ材は、通常柾目面が表面に露出するような板取りである。「杢」が出ている材を使用することも多い。
構造
基本的な構造は左に示した図の通りである。
表板の裏側には、力木(バスバー)と呼ばれるスプルース(表板と同じ材)の部品が、膠で張りつけられる。これは表板を補強するとともに低音の響きを強め安定させる役割も果たす。
胴体内には、魂柱(サウンドポスト)と呼ばれるスプルースの円柱が立てられている。魂柱はコマから表板に乗った振幅を裏板に伝え、両板の振幅を適切に引き出して音色・音量を決定する重要な役割を果たす。
駒・魂柱・ペグ・エンドピン以外の各部位は、ニカワによって接着される。ニカワで接着された木材は蒸気を当てることで剥離することができるため、ヴァイオリンは分解修理や部材の交換が可能である。
指板の先には弦の張力を調整する糸巻き(ペグ)がついている。先端の渦巻きは装飾で、この部分に別の彫刻(人、天使、ライオン等の顔)が施される場合もある。
胴体の周囲には黒檀によるパフリングという細い二重ラインを呈した埋め木が施される。本来これは装飾目的ではなく、板の振動をそこで止める・外部からの振動/衝撃をふせぐ、という役割をもつ[要出典]。
塗装
塗装には基本的にニスが用いられるが、一部の安価な楽器にはポリウレタンも用いられている。
ニスにはスピリット(アルコール)系とオイル系の二種類がある。通常で30回程度、職人によっては50回ほど、薄いニスから徐々に濃いニスを塗ってゆく[要出典]。塗装の目的は湿気対策および音響上の特性の改善である。一般的にオイル系ニスはアルコール系よりもやや柔らかいことが知られている[要出典]。ニスの種類による音の違いは大きい
4本の弦はエンドピンによって本体に固定された緒止め板(テールピース)から駒の上を通り、指板の先にあるナットと呼ばれる部分に引っ掛けてその先の糸巻き(ペグ)に固定されている。正面から見て左が低音、右が高音の弦であり、日本ではドイツ音名を用い高い音の弦から順に、E線、A線、D線、G線(えーせん、あーせん、でーせん、げーせん/ドイツ語読み)と呼ぶ事が多い。E線、A線、D線、G線の代わりに1番線(I)、2番線(II)、3番線(III)、4番線(IV)と番号で呼ぶ場合もある。この順番は世界共通。
材質
もともとヴァイオリンの弦はガット(羊の腸)を用いていた。しかし標準ピッチが上昇するにつれ、またバロック様式の楽器から近代になってネックの仕込み角がきつくなってくると、高い張力に耐える弦が求められるようになった(現在のガット弦は金属の巻線によって補強されている)。
現在では金属弦や合成繊維(ナイロン弦)も多く用いられる。現代では、単純なナイロン(ポリアミド)芯にアルミ巻き線を施した弦から、合成樹脂繊維の最先端技術を取り入れた芯にアルミや銀を含む金属製の巻き線を施した弦が主流になりつつある。これらの最新式の弦は、音色的にはガット弦に近い一方でガット弦ほど温湿度に敏感でないという長所を持つ。
弦のメーカーとして有名なのはピラストロ社、トマスティック社などである。
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調弦方法
ペグを回すことで調弦を行うが、E線はペグによる音程の微調整が困難であるため、アジャスターと呼ばれる小さなネジをテールピースに取り付けて調弦する。子供用ヴァイオリンは、子供がうまくペグ調弦できないこと、またフルサイズに比べペグが回りにくいことなどから、調弦し易いようにアジャスターが全ての弦に付いているものがある(弦に直接取り付けるタイプのものとは別)。
普通は音叉などでA線を440ないし442Hzに調弦し、A線とD線、D線とG線、A線とE線をそれぞれ同時に弾いて、完全五度の和音の特有の響きを聞いて調弦する。協奏曲演奏に際して、442Hzを越えるように調整して華やかな独奏バイオリンを引き立たせる方法もある。
バロック・ヴァイオリンではピュア・ガット(金属の巻かれない裸のガット弦)を用い、多くの場合A線を415Hz(バロック・ピッチ)あるいは392Hz(ベルサイユ・ピッチ)に調弦する。バロック時代のピッチは今より低く、バロック・ヴァイオリン自体の性質上、そのピッチが適切だからである
木製の竿(スティック)を直線に削り出し、慎重に火を入れて適度なカーブを持たせた竿に、馬(蒙古馬)の尾の毛(白毛)を平たく張る。この毛に松脂を塗って摩擦力を生じさせ、弦をつかむ。 松脂は粉末として毛の間に蓄えられるという要素以上に、松脂が弦との摩擦による熱で毛に溶けつき適度な粘りを生じる。松脂をぬってしばらく弾き、その粉末が適度に溶けつくことで音色が安定する。そして、ある程度弾いて松脂が適度に毛に溶けつくと、松脂の粉末が弦の下に落ちる、ということは無くなる。
スティックは通常ブラジルウッドやペルナンブコという南米産の木で作られるが、スネークウッドも少数派ながら使われている。現代ではブラジルの輸出規制もあり優良なペルナンブコは入手が難しくなってきている。 最近では繊維強化プラスチック (FRP) 製、カーボンファイバー、グラスファイバー製の弓も存在する。同じ人工繊維製でもグラスファイバー製の弓は一般的に安価であり、プロ用のものはきわめて稀である。対照的にカーボン製の弓は弾力性、剛性、湿気への強さなど優れている面が多く中級からプロ仕様のものが主流である。現在では技術力の向上により、手作りのペルナンブコ製の弓よりも性能が高いものも多数ある。
演奏しない時は、弓の毛は通常ゆるませておく。
先端(ヘッド)にはチップと呼ばれる薄い保護板があり、牛骨又や銀板が用いられている。古い弓では象牙(現在は違法)を使っているものも多数ある。最近では安価なものにはナイロン系の合成樹脂なども用いられる。 銀板などの金属製チップは(英国の作者が良く用いる)ピンを差して固定しているため、ヘッド部分の内側に亀裂が入りやすい。竿を振った際の重量バランスも崩れやすい。
当時の良質のペルナンブーコ材を用いて、19世紀のフランスにおいて優れた弓が多く製作され、フランソワ・トゥルテ(トルテ、タートとも)、ペカット、キッテル、パジョなどの名匠がいた。現在ではそれらはオールドフレンチボウとして扱われ、その世界的評価額は高額(百万円?数千万円)である。
作者名はスティックに焼き印として記される場合が多いが、当時のディーラー名を記したり、イミテーションやコピーとして著名作者名を記したりする場合も少なくない。またトゥルテなど全く作者名を記入しなかった人もいる。この作者焼き印(スタンプ)は、フランス式とドイツ式で異なり、フロッグを上にした時に読める向き(弓のスクリューから先端方向)がフランス式、フロッグを下にしたときに読める向き(弓の先端からスクリュー方向)がドイツ式である。ただし、著名作者の作品をコピーした弓などは、ドイツ製でもフランス式の焼き印がなされる事があり、安物の真贋判断は専門家でも難しい。
フロッグには黒檀が、金具には銀が一般的に使用されるが、黒檀の代わりに鼈甲や象牙、銀の代わりに金が使われることもある。装飾として美しい螺鈿細工が施される。これらは現代スタイルの弓を確立したトゥルテが元々宝石・時計職人であり、その金属加工技術などを弓作りに応用したことから始まる。ラッピングにはナガスクジラのヒゲがよく用いられてきたが、現在では銀線や銀糸が多い。
分数楽器
通常の大きさ(4/4,フルサイズ)の他に、子供向けにサイズを小さくしたヴァイオリンも作られている。1/16,1/10,1/8,1/4,1/2,3/4,7/8と呼ばれるサイズなどがあり、これらを分数楽器という。
分数楽器の数字は通常、大人用(4/4サイズ)に対する胴部の容積の比率を表していると説明される。しかし、実際には胴体の長さと比例て現在作られているのバイオリンの殆どが次の法則にしたがっている。フルサイズ=14インチ、3/4=13インチ,1/2=12インチといった具合である。しかし、1/10以下の楽器はメーカーによってもスペックが違い、あるメーカーの1/10が他のメーカーの1/16と同じであったりすることもある。
メーカーや工房によっては一般的でないサイズや伝統的なバイオリンの形から外れた楽器を特注で製作するところもあるが、非常に稀である。